2014年夏(34回)スタディツアー感想文
11)本橋さん(東京都 学生 女性)
 学校で教わるような机上の空論が嫌いで、この目で実情を確かめようと思った。現地の人々が本当に欲しがっているのは何か、現地で即戦力になるスキルとは何か、それを知った上で、自分がそれらを提供できるような人間になろうと考えていた。

 私の身ひとつで彼らの希望を少しでも満たせるものがあると、少なからず自負していたのだ。しかしそんな上手くいく訳がなく、私が搾り出した知恵などただの思いつきだと思い知るのが現実。

まりこアンティの「支援は金」という言葉は、浅はかな私には痛かった。

続き
 が、確かにそうだと思った。このツアーで私は、“そういうこと”を学んだ。ネパールの情勢や各施設の活動についてなど、新しく知れてうれしかったこともたくさんだが、私にはこの想像と現実とのギャップが一番ショッキングだったかもしれない。

 ギャップその1、-施設で働くスタッフの人数が、想像以上に多い。
 なおかつ1人ひとりが責任を持って、献身的に少女らや障害者を支えている。デイケアセンターで、携帯を欲しがった男の子に、せがまれるがまま自分のそれを手渡そうとしたところをスタッフの方に制止されたときは、考えなしの自らを恥じたと同時に、時間をかけてケアしてきたスタッフの方々の努力の様子を垣間見た気がした。また、マイティ本部には弁護士が置かれ、地域住民の駆け込み寺になっていることには特に驚いた。

 つまりなにが言いたいのかというと、現地の人に「外人に金以外のことなんて求めてない」と言われた気がした、ということだ。

 しかしやはり、私のような要領の悪い人間が大きな単位のお金を扱ったり、政治に関与したり、そういったスケールの大きいことをしようとしても、状況はあまり変わらないか、もしくは悪化するかのビジョンがどうしても拭いきれない。

 また、私の理系科目におけるマイナスベクトルの大きさを考慮すると、ここは例えば、デイケアセンターに通えない子たちの自宅に私のほうから訪問しお手伝いをする、あるいはそうしてくれるスタッフを探す役をしてみるなど、これも簡単なことではないのだろうが、私はやはり、「よくなってきている。が、“実際はいまだに……”」の“実際はいまだに”という、流しそうめんのあまりを受け止める桶のようなことをしたい。臨床心理士、栄養士……とにかく、私でもできることを確実に身につけられるようにしていきたいと思う。

 ギャップその2、施設の女の子、そして男の子も“かわいそう”ではなかったということ。
 まりこアンティの著書『少女売買』の、カビータのエピソードは初めて読んだときから今でも衝撃的で忘れられない。幸せの配分があまりに不平等だというアンティの訴えが、私の心を強く揺さぶった。そして私は幸せすぎる自分の身の上が急に申し訳なく思えてしまって、「幸せを分けてあげたい」というよりも「不幸をもらってあげたい」と考えるようになってしまっていた。つまりは、彼女らを不幸でかわいそうな子たちだと思っていたのだ。

 しかし実際に会った彼女らは、皆がみんな本当に前向きに生きていた。弟・妹の面倒をよく見るし、成績が優秀な子も多い。全員が、自分たちは家族なんだと心から信じているように感じた。特にマドゥは、自分がお姉さんであることをしっかり自覚していて、みんなを後ろから見守るような様子が大人っぽく、私なんかよりもずっと人間として立派だった。

 彼女とは年も近いし、もっといろんな話をしたいと思っていたが、こちらのほうが教えてもらうことが多そうだ。そんな彼らの様子を見て、Victimでなく、survivorという言葉はまさにピッタリだと思った。

 今回のツアーは私にとって(ほぼ)初めての(といってもよい)海外の旅で、最年少ということもあり、かなり周りに甘えていたところがあった。正直、前述の“ギャップ”に戸惑うことに忙しくて、具体的な“これから”を考える余裕がなかったし、施設で働くスタッフさんたちに対してももっと積極的に話を聞きに行けばよかったと反省している。

 来年もまた参加することはもうみんなに誓ってしまっている上、そのために来年の旅費を積み立てる新しい口座も作ったので、次回はしっかり自分の足で動いていきたいと思う。とりあえず、10月の文化祭でビーズを売っている写真を見て、彼女らが喜んでくれたらうれしい。販売の様子を土産話に、彼女たちと再会したい。

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