2014年夏(34回)スタディツアー感想文
7)藤城さん(東京都 社会人 女性)
 今夏、初めてスタディツアーに参加しました。海外旅行も超久しぶり、ネパール初上陸、スタディツアー参加経験なしの私は、出発前はとても不安と緊張を感じていました。

 事前研修会に参加して、その不安はさらに別な不安になりました。それまでは、未知の土地への漠然とした不安でしたが、研修会で初めてお会いした他の参加者の皆さんの高いモチベーションや知識、真摯な態度に圧倒され、「私のようなふわふわした者が参加して、役に立てることが果たしてあるのだろうか」とか、「行ったらかえってご迷惑じゃないかしら」といった、言わば自分自身の「レベル」に対する不安となりました。

続き
 そんな不安を感じつつも、日々の生活や仕事に追われ、その後何の予習も情報収集もせず、あっという間に出発日となりました。

 飛行機の中で、「そういえば、いつもこんな感じだよな」とふと気づきました。初めて閉鎖病棟でボランティアをしたときも、初めて海外旅行(内モンゴル自治区)に行ったときも、もっといえば昔修学旅行に行ったときだって「ああ、もっと事前に勉強しておけばよかった」とか「何かほかの方法ででも、経験値を上げておけばよかった」と思い、そしていつも、「仕方がない。今はこれが自分なんだから、できることをやって、できるだけ吸収しよう」と思ったものでした。今回も、せっかくの機会を与えられたのだから、なるべく多くを見聞しよう、そう思ってネパールの地を踏みました。

 滞在中、上記のような不安を感じることは全然ありませんでした。予習が足りない、などと思う暇もありませんでした。まり子さんはじめ、皆さんのおかげで危険なこともなく、本当に楽しい日々でした。危険というか、驚かされたことをしいてあげれば、ネパール到着時、雨の中、駐車場で突然私の荷物を持っていく人がいて、慌てて追いかけたらちゃんとホテルの車まで運んでくれたもののチップを要求されたことがありました。

 もちろん払わずに、断ってもらいました。このときは、「ああ、日本を離れたんだなあ」と体感しましたが、そのおかげで、錆びついていた自分のギアを、久しぶりにしかも瞬時に海外用にチェンジできたような感覚になりました。

 ネパールの方々は優しく温かく、置かれている状況はとてもシビアなはずなのに全然それを感じることなく楽しいイベントの連続でした。ご一緒させていただいた参加者の皆さんもとても明るく、私も一緒になって笑い転げました。ホスピスの子どもたちはとても明るく、一見、HIVどころか風邪1つひかなそうなくらい元気いっぱいでした。

 また、女性たちは気さくに話しかけてくれました。言葉は通じないはずなのに、言っていることがなぜかわかるのが、とても不思議でした。マイティ本部でもそれは同様で、さらにマイティ本部では、施設の大きさや年代の幅広さなど目を見張るものでした。

 私に何ができるか、という不安については、今までの自分の仕事や今就いている仕事で経験したことを曲がりなりにも活かすことができ、全ての出来事は今の自分と未来の自分に繋がっていることを改めて実感しました。今の仕事は実は「たまたま配属された」児童福祉関係のものだったので、仕事への戸惑いを日々感じていたのですが、まさかネパールに繋がっていたとは! フランクルの「どんなときも人生には意味がある」という言葉を思い出しました。

 今回、別な側面で感銘を受けたことがありました。それはツアーに10代20代の若い方々が多数参加されていたことです。皆さん、普段はそれぞれの場所でそれぞれの暮らしをされている中で、自分なりに人身売買について考え、自分なりに取り組み、そして観光旅行ではなくスタディツアーに参加しようと決めてきた方々でした。

 そんな方々が各地にいて、今回こうして集結する場に居合わせることができ、とてもありがたいことだと思いましたし、大げさですが「日本の若い人たち、ぜんぜんダイジョブじゃん!」と思いました。

 ツアー中も話しましたが、私が今の職業に就こうと決めたのはディズニーランドへの障がい者引率ボランティア経験で、ディズニー側でも連れて行く側でもないところに自分のやりたいことがあると気づいたからだったので、今回のツアー経験もきっと、若い方々自身のこれからの羅針盤の一部になると思うし、私の中でも大きな学びとなりました。

 もし、私のレポートをツアーに参加しようか迷っている方が読むといったことがあるのでしたら、私はぜひ参加してみることをお勧めしたいです。ネパールも人身売買も、初めは「聞いたことはあるけどあまり知らなくてちょっと遠い存在」だった私でも、行って何かしらできることがあると思ったし、今回のツアーが自分の器の中に新たな何かを入れてくれたと思うし、もしかしたら器の一部となってくれたかもしれないと思うからです。

 自分の前にある扉は、まずは開けてみて、そうすればまた新たにいくつも扉が出てくるから、そしたらまた選んで開ければいい、という言葉を以前知人から聞いたのですが、今回は、私にとってはすごく重いと思っていたけど「えいっ!」というかけ声で押したら開けられる扉だったし、開けてまたいくつか扉を発見できたと思います。

 旅慣れている方は「百聞は一見にしかず」という言葉も実感し慣れていると思いますが、あまり旅行をしない私は、百聞は一見にしかずがどういうことか本当に実感することができました。百聞は一見にしかずとは、現地で、見聞きするだけではなく五感全体で感じることだと思いました。

 ツアー中、体調不良でダウンしましたが、これも普段は感じることを忘れていた体感覚や直感を鍛え直すよい機会となりました。これは、ただ「体調管理に気を付ける」という字面を追うだけではわからなかったことでした。

 最後になりましたが、長谷川まり子さん、ラリグラスのスタッフの皆さま、ツアーにご一緒させていただいた参加者の皆さまと、ネパールの方々に厚く御礼申しあげます。本当にありがとうございました。

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