2015年夏(35回)スタディツアー感想文
1)大野国さん(東京都 社会人 男性)
 8月8日(土)
 当初の予定ではこの日からネパールに入るはずであった。ところが、ツアーの足と考えていたタイ航空のネパール路線がまさかの減便。震災後の雨期とあって席が埋まらないことから、土曜日のバンコク-カトマンズ便がなくなってしまったのだ。

 仕方がないので出発を1日後倒しして日曜未明の羽田発、バンコク経由で行くことに。羽田発が日曜の0:20ということで、土曜の夜に羽田空港でチェックイン。空港で落ち合った羽田発のツアーメンバーは、ラリグラスに届いた支援物資等を分散して運搬するため、各自の預け入れ荷物の隙間に支援物資を詰め込む。

 震災の影響で例年より支援物資の量が多く集まっていたものを何とか押し込め、追加運賃が発生することもなくチェックインは完了!

続き
 8月9日(日)
 羽田を出てバンコクで一休み。乗り継ぎ時間は5時間ほどもあることから、この時間を利用してカトマンズ到着後すぐに春日さんがテレサ・アカデミーで行う日本紹介プレゼンテーションの打ち合わせなどを行う。その後、関空出発の藤本さんとも無事に落ち合って、いざカトマンズへGo! カトマンズの空港では、まり子さんや一足先に到着していた徳山君と合流し、早速マイティ本部へ移動。ひとしきり見学の後、テレサ・アカデミーで春日さんが、普段の仕事で鍛えた腕を生かした授業を実施。

 幼児クラスでは英単語のカードではアルファベットを楽しく学び、高学年クラスでは日本紹介のプレゼンを披露。バンコクでの打ち合わせの成果もあり、ツアーメンバー全員の協力で楽しい授業となりました。ここで特技を生かしたのは、普段子どもに勉強を教えている春日さんだけにとどまらず、バルーンアーティストの鈴木さんも大活躍! 幼児クラスでは花や犬を作って大人気で、高学年クラスのプレゼンではサムライを紹介するところで「風船刀」を作ってしまうあたり、さすがです。授業時間が終わったら、お楽しみお菓子のお配り。みんなおいしく食べたかな?

8月10日(月)
 朝からホスピス訪問。ホテルからホスピスまで向かう道の途中で、震災被災者のテント村の前を通った。カトマンズ市内の表通りでは瓦礫はほぼ見られない状態であり、震災の傷跡を目撃するのはこれがはじめてとなった。

 ホスピスのほうはこれまでと異なり、子どもたちがテレサ・アカデミーの寮に移ってしまったかわりに、昨年までサッチガッタの施設にいたメンバーがここで暮らし始めている。旧サッチガッタメンバーにカトマンズで会うと一瞬違和感を受けてしまった。転居ストレスによる悪影響はとくになかったようで、ラダも笑顔が増えていて一安心。この日ホスピスメンバーの作ったビーズ製品の検品を行う予定であったものの、仕上げができていなかったので別の日に行うことになってしまった。結局この日は新デザインを伝えるだけで終了。

 昼食後、ホスピスを後にしてタライ平原にある都市ヘタウダへと出発。ヘタウダへ向かうつづら折りの山道を進むと、所々で崖崩れの跡が見られた。ネパールでは雨期になると崖崩れはしょっちゅう発生するものだが、今回目撃した崖崩れはスケールが違い、山の上から下まで数百メートルの高低差に及んでいる。また、谷向こうの遠くに見える村の建物がなにやら銀色にキラキラ光って見えて、普段と違う感じを受けた。最初のうちはキラキラの正体がわからなかったが、途中でハタと気がついた。トタンで作った仮設家屋の屋根が太陽光を反射してキラキラしているのだ!

 崖崩れによる通行止めの時間もあり、予定より遅れて夕方遅くにヘタウダに到着した一行は、 マイティのヘタウダ事務所に寄ってプリベンション・キャンプ卒業生の女の子たちにひとまずご挨拶。お土産を渡して少し打ち解けたところでホテルへ移動した。ヘタウダのホテルは、これまでの訪問地であったカカルビッタの宿とは大違いの豪華ホテル! プールも備えて、高級ショッピングモールも隣接。う〜む。ネパールとは思えないぞっと!

8月11日(火)
 プリベンション・キャンプ卒業生の女の子たちとピクニックへ。行き先はヘタウダ近郊ののどかな丘陵地帯にあるリゾート公園! 雨期とは思えない好天に恵まれたのは、日頃の私の行いのよさの賜物か。そして今年もこの時点で早速ミツコの登場よ! 去年よりパワーアップして「強く優しく美しく」なったプリンセス・ミツコが徳子(徳山君)を従えエレガントに登場!!

 リゾート公園では屋根付きスペースを確保してまずはティータイム。一服した後は言うまでもなく、音楽が始まりダンス・ダンス! ひとしきりダンスを楽しんだ後、公園内をみんなで散策。ここにはなんと観覧車もあり、当然みんなで乗ることに。日本のテレビ番組でも紹介されたことがあるけれど、ネパールの観覧車はやたらと高速回転をするのが特徴の1つ。最初のうちはゆっくり回っていたものが、全員が一通り眺望を楽しんだとみるや、オペレーターがアクセル(電気ではなくエンジン駆動)全開!! これはもう観覧車を通り越してジェットコースターレベルで「一粒で二度おいしい」お得なシステムである。日本から来たメンバーも悲鳴を上げるハイスピードを、観覧車初体験のネパールの女の子たちは結構楽しんでおりました。

 公園内の散策を終えたらランチタイム。肉や魚を贅沢に使ったおいしい料理を楽しんで、満腹したところで眠くはさせない私たち。目の覚めるような驚きの手品でみんなの目をぱっちり覚まさせて・あ・げ・る! おそらくは生まれてはじめて目の前で手品を見る女の子たち、前日夜の練習だけで本番に挑んだツアーメンバーの手品に驚く驚く。さらに手品に加えて、バルーンアートでみるみる形を変えていく風船にも驚く驚く。高速観覧車に続いてみんな目を回しておりました。

8月12日(水)
 国境の町ビールガンジへ移動して、マイティのトランジット・ホームと国境のチェックポイントを見学。ビールガンジはネパールの中でも大きな工業都市であり、国境の往来も盛んである。我々が見ている間にもマイティのスタッフはきびきびと働き、ちょっとチャラチャラした女の子2人連れに声をかけて話を聞いている。幸いその2人は人身売買とは関係なさそうであった。

 その後、再びヘタウダのマイティ事務所へ。女の子たちに昨日のピクニックの感想を聞く。みんな生まれてはじめての経験を心から楽しんでくれたようであった。

8月13日(木)
 ヘタウダを出発しカトマンズへ移動。途中2本の街道の合流点にあるマイティのチェックポイントを見学。各地での地道なチェックが人身売買を未然に防ぐことにつながるので、ここもチェックの要衝となっている。

 カトマンズ到着後は観光と土産購入と併せて、ラリグラスの商品仕入れのお手伝い。地震の影響で観光客が減っており、どこも例年より閑散とした雰囲気。ボーダナートは震災被害の修復中であり、地震がネパールにもたらした被害の一端を見ることになった。

8月14日(金)
 NDWS訪問。ゴダワリに向かう道の途中では、所々で地震により崩れ落ちた家々の残骸を見ることになった。カトマンズ市内中心部とは異なり、このあたりでは崩れた建物の撤去が終わっていないらしい。NDWSの活動地域では、NDWSの支援で建てられた仮設住宅の脇に、崩れた家の瓦礫や、形は保っているものの住むには危険な被災家屋が残っており、復興への道の遠さを実感することができた。

 昨年のツアーがきっかけで私が支援することになったマヘンドラの家も、元々の家は崩壊して土の山のような状態で、マヘンドラたちの家族はトタンでできた仮設家屋で生活をしていた。病気を抱えたマヘンドラがこれからの冬を過ごすには相当つらそうである。できるだけ速く腎移植を行って、彼の負荷が少しでも低減できることを望む。例年訪問しているハシーナの家も地震被害を受けており仮設家屋暮らし。地震から3カ月以上経過してハシーナの状態は落ち着いてはきているようだが、こちらも生活環境は大幅に悪くなっている。元の生活を取り戻すには長い時間がかかるであろう。

8月15日(土)
 土曜日は休日。ということでホスピスメンバーは寮生活の子どもたちも合流しピクニックへ! 今年のピクニックにはマイティに保護されている震災被害者の子どもたちも何人か参加。行き先はカトマンズ盆地を取り囲む山の中腹にある、これまたリゾート公園。観覧車はなかった。

 ピクニックの最中ではあるものの、ツアー日程の都合上、ビーズ検品作業はこの日に行うしかなく、ホスピスメンバーは自分の製品を公園まで持ってきて検品開始。全体として品質は向上しており、ほとんどの品が合格レベル。いくつかの製品は、使用ビーズのサイズが大きめであったために、ブレスレットの全体サイズも大きくなり、ゆるめに仕上がってしまっていた。「ビーズの数」だけを基準とせず、「使用ビーズの大きさと仕上がりサイズを見てビーズの数を調整」という工夫ができればよいのだが、それはそれで難しいところ。

 検品が終われば当然のごとく音楽とダンス! みんなが楽しんでいるテントの裏では、これまた当然のごとく怪しい動きが始まった。そう、プリンセス・ミツコと徳子の変身シーンである。
 今年は屋外ということもあり、ツアーメンバー女性陣の仮装はなし。女性参加者の皆さん、残念でした。

 ダンスと食事が終わった後は、例によって手品のお時間。今年は手品に加えてバルーンアートも満開で、鈴木さんから作り方を教わったツアーメンバーもあちこちで風船の花を咲かせる。

 ホスピスメンバーはみんななじみであるものの、被災して保護された子どもたちは周りに顔見知りがいない状況。ダンスのときや食事のときも遠慮しがちではあったけれど、手品やバルーンで笑顔を見せてくれました。震災後に家族と離れての不安な暮らしの中で、少しは楽しんでくれたかしら。

8月16日(日)
 短縮日程の春日さんと私はこの日が最終日。空港へ行く前に全員で、空港近くに立地するマイティ本部を再訪問。最近保護された女性たちの職業訓練の様子を見学した後、空港へ移動。被災地支援に向かうメンバーと空港でお別れして国際線チェックイン。飛行機が離陸する際、みんなが被災地支援に向かったバクタプルの町並みを見通すことができた。「被災地支援の方はよろしく!」と、心の中で皆さんにお願いをしてネパールを後にしたのでありました。

終わりに
 東日本大震災から4年が過ぎても、復興へはまだまだ時間を必要としている日本。ネパールでは日本よりもさらにインフラが不足していることから、復興への道はさらに遠いのではないだろうか。今回は震災復興支援のお手伝いをすることなく帰国した私ではあるが、今後も長期的に関わっていこうと思う。

 今年のツアーメンバーは例年以上にパワフルで、楽しい時間を過ごすことができました。ツアー参加者の皆さん、ありがとうございました。
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