2015年夏(35回)スタディツアー感想文
3)柴田さん(東京都 社会人 女性)
 若い学生(しかも志(こころざし)の高い学生さんたち)とのスタディツアー。私は彼らの母親以上の年齢ですので、ツアー中は体調を崩して若い人に迷惑をかけないようにとがんばりました。皆さん、ほんとうにありがとうネ。

 楽しいこと?――、ありました。笑い?――、ありました。笑ってはすまされないネパールの現実?――、目にしました。そして、「ミツコ」「トクコ」「ラジャコ」という絶世の美女(物(もの)の怪(け)?)にも出会いました。とにかくこのツアー、いろいろな意味で衝撃的でした。そのため、なかなか感想文を書くことができません。どう消化していったらいいのか、今もお腹いっぱいの状態です。

続き
 私がこのスタディツアーに参加したのは、長谷川まり子さんの著書『少女売買』を読んだのがきっかけでした。貧困から初等教育もまともに受けられず、社会常識も欠けた少女が騙されて売春宿に売られ、性の奴隷として働かされる……。自分の幸せの形を自分で決めることすらできない少女たち……。「その現実を見たい」、そんな思いからの参加でした。

 で、見てきてどうだった? 帰国後、周りの人から聞かれます。私は答えます。「正直なことを言えば、人身(女性・少女)売買の現実の一端を見て戸惑っている。重い。澱(おり)がどんどん溜まっていくような気にもなっている。なんかモヤモヤしているんだよねぇ。う~ん、複雑! 感想がまとまりませぇーん」と。じゃあ、心に強く残っているものは? 再び質問されます。再び私も答えます。「どれもが心に残っているけど、しいて言えば被害少女たちの眼かな」と。

 今回、インドとの国境の町ビールガンジにも行きました。そこには、マイティ・ネパールが運営する検問所がありました。トタン屋根の小さな小屋の中には、行きかう人を厳しくチェックする女性たちがいました。人身売買犯罪を水際で防ぐための見張りです。彼女たちのなかにはインドの売春宿から救出され保護され、マイティ・ネパールのスタッフとして雇用された人もいるとのこと。彼女たちの仕事ぶりは「カッコイイ!」の一言に尽きました。不審人物を尋問するときは眼光鋭いハンターの眼。しかし、プレゼントのアクセサリーを受け取ったときは乙女の眼差し。このメリハリがたまらなく素敵でした。

 ふ~ん。ま、モヤモヤした中でこれからゆっくり考えていけばいいじゃん。またまた周りの声。「そうするわ」とまたまた私。そう言った後、必ずこうも言います。「なんだかモヤモヤしているけど、人身売買という状況を『変えていこう』『変えなければならない』という人たちの希望と熱意に覚醒させられている自分を感じてもいるんだよね」と。

 売春宿から救出された少女たちは、今やっと幸せの形を自分で決められるようになったのではないでしょうか。これもレスキュー・ファンデーションやマイティ・ネパールの活動があってのこと。売春宿からの救出、インドから帰還した少女たちのリハビリや自立支援……、大変な思いで活動されていると思います。

 マイティ・ネパールの「マイティ」とは「母の家」という意味だとか。お母さんの元に戻り、羽を休めて新しい世界にもう一度飛び立っていこうとする少女たちの姿を目にすることができました。彼女たちが自ら決めた幸せはどんな形でしょうか? 自分の幸せの形を自分で決めることができるのだから、今度は胸を張って進んでいってほしいですね。

 ところで、今回のツアーには2人の男性が参加されていました。天晴(あっぱ)れ! です。女性福祉に関してはネパールだけではなく、日本にもたくさんの課題があります。女性や子どもが不幸にならないために、人が人としての尊厳をもって生きられるように「予防的支援」も大切です。それについては男性も一緒に考えていくことが必要だと思っています。

 このツアーをきっかけにツアー参加者がそれぞれの答えを持ち、各人が問題と思ったことに向かうことができるとよいですね。それが合体して、よりよい方向に進んでいける動力になるとよいですね。

 モヤモヤとした感情の中、ネパールに行ったのを遠い昔のことのように感じ始めています。日常生活に戻り、慌ただしさの中にネパールが埋もれそうにもなっています。今日、部屋の壁に1枚の写真を貼りました。くすんだレンガ色のカトマンズが、ツアーの思い出とともにさまざまなことを私に訴えかけています。

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