2016年夏(36回)スタディツアー感想文
1)市川さん(群馬 学生 女性)
 私にとって、初めてのネパール。初めての途上国。周囲の人たちは「危険じゃないの?」とか、ふざけて「生きて帰ってきてね」とか、たくさん心配してくれていました。でも、日本とネパールは水と土でつながっていることだし、私は出発前から何も心配していませんでした。実際に行ってみて感じたのは、自分が慣れない環境に対してある程度柔軟に対応できるのだな、ということ。

 ネパールのちょっと砂っぽい空気も、車で溢れる道路も、果てしなく広がる大自然も、全部大好きで、既に懐かしさを感じています。帰国して3日くらいはずっと日常生活の中で「日本無駄な電気多すぎ!」「廊下こんなにきれいにする必要ない!」とかグチグチ文句を言っていたのが、もう今はまた日本のスタンダードに感覚が戻ってしまっているのも寂しい気もします。

続き
 私はネパールの言葉が話せるわけではないので、ネパールの女の子たちとの共通言語は、ダンスでした。どこへ行ってもみんなダンスが好きで、ダンスのジャンルは違うけどとりあえず踊って……。 相手が何を考えているのか、そこに言葉はなくてもわかることはあるのだなと、身をもって実感しました。 ネパールの女の子たちは、曲に合わせて決まった振りで踊るスタイルではなくて、リズムに身を任せて自由に自分を表現していて、キラキラしているように感じました。

 一方で、一緒に楽しく遊んだり、踊ったりしているとき、その子の抱える壮絶なバックグラウンドをふと忘れそうになる瞬間が何度もありました。 それがよいことなのか悪いことなのか、ツアー中も何回も考えましたが結局答えは出ませんでした。最終的に、考えても答えは出ないんだからとりあえず一緒にいる時間を楽しもう、という結論に至りました。 でも、ふと見せる表情、踊り疲れて休憩しているほんの一瞬、その一瞬の表情から思い起こされることがたくさんありました(正直私もうまく文字で説明できません。 ただ、帰国してからもずっと心の片隅に引っ掛かっている気がします)。

 また、人手が足りない、スポンサーがお金を出してくれない、資金が足りない……など支援において切実な問題が山積している、ということを初めて現実の問題として理解しました。 というのは、今まで本やニュース等の媒体を通してそういった情報に触れ、頭では理解していたつもりでしたが、変な言い方をすると、実際に目の前に立っている人が自分の経験を元に声に出して言っているのを聞いたのが初めてだったからです。 百聞は一見に如かず。見るもの聞くもの全部が全部想像以上でした。

 ネパールに行く前の私は、「なぜ国連や各国政府ODAやNGOが全力をあげて途上国支援を行っているのに、さまざまな社会問題が解決されないのだろうか?」というのが正直なところでした。 でも実際にネパールに行っていろいろな人の話を聞いて、そんなうまくいくはずがないのだと妙に納得させられました。 人の数だけ人生観や考え方があり、国の制度・法律などさまざまな要因が複雑に絡み合っているのを実感しました。 そんな中での、まり子さんの「大きくは変えられなくても少しずつ改善していくことが大事」という言葉はとても印象深かったです。

 最後に、私事ですが、先日京都で開催された立命館高校主催のJSSF(Japan Super Science Fair)というシンポジウムに参加し研究発表をしてきました。 世界約23カ国から総勢120人以上(多分)の高校生が参加するビッグイベント。 そこで一番驚いたのは、参加校の1つがネパールから来ていたことです。読み方は忘れてしまったけれど、Budhanilkantha schoolという学校で、3人の女の子と先生が来ていました。 私は、今こそ「ナマステ」と「メロナームミカホ」と「タカイラギョ」を使うときだと思い、ネパールのJKに機会を見つけて話しかけに行きました。

 英語で挨拶をかわし、その後「メロナームミカホ」を召喚するととても驚いていました。 大野国さんのネパール語講座がとんでもなく役に立った瞬間でした。私は最初「どうせネパールの中ではお金持ちのお嬢様なんだろうな~ きっと人身売買とかは興味ないだろうな~」と思っていました。 しかし実際は違っていて、彼女たちがお嬢様であることは間違いないけれど3人ともマイティ・ネパールについてとても詳しく知っていたし、そのうちの一人は将来社会的に立場の弱い人のために何か活動がしたいと言っていました。

 サイエンスという目的で集まったはずの私達は、いつの間にか人身売買やネパールの教育制度、政治、文化などの話題で盛り上がっていました。 ネパールのJKは当たり前ですが英語が堪能で、最初は私が理解できるように気遣って、とてもゆっくり喋ってくれていました。 しかし、だんだんお互い会話に熱が入ってくるとものすごいスピードになっていき、最後の方はよく聞き取れなかったです(笑)。ただ、同じ志を持っているということだけは終始感じられました。

「ネパールに行って実際にそういう施設を見て、どう思った? その後日本に帰って何かしてる?」「日本にいてもできることはたくさんあると思ったし、できることは何でも協力しようと思った。 今度文化祭で彼女たちが作ったものを売ったりするの」

 感覚として、世界は狭いのだか広いのだかわからないのですが、少なくともこのときは、自分の行動次第でその広さは変わると思いました。 新しいことを知れば知るほど、いろいろな人と出会えば出会う程、世界は無限に広がっていく。 いつか将来彼女と同じ職場で働くことになるかもしれないし、まり子さんとラジャさんのように仕事上のよきパートナーになるかもしれない。可能性は無限にあると思いました。

 ネパール人にも、日本人にも、素敵な出会いのあるツアーでした。ネパールで見たものや感じたことは、この先もし私が国際協力と関わっていくとしても圧倒的な最初の印象として一生忘れられないものになるでしょう。

 一般的な高校生が受験に追われるこの時期に、こんなにもすばらしい経験ができたのも、ひとえに今回のツアーに関わっていただいたすべての方のおかげです。 忙しい中引率をしてくれた𠮷田学院長先生、私がまったく知らなかった世界を教えてくれたまり子さん、ラジャさん、参加者の皆さん、そして何より、このツアーに参加することを承諾してくれた両親。 すべての方に、感謝の意を込めて。

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