2016年夏(36回)スタディツアー感想文
9)鈴木さん(東京都 社会人 女性)
ハニカミの国ネパール。まさか、今年も参加することになるなんて、自分が一番驚いています。参加の理由を一言でいえば「やり残したことがあったから」。
完全に自己満足ですが、もっとこうしたかったという思いを消化するためにリピートしてしまいました。少し長くなりますが、私のくだらない感想文にお付き合いください。
●グルメツアーのその後
2回目のネパールでまたおいしいものに出会いました。チベット料理のきしめん「テントゥク」、ホテルSAMANAの「チーズボール」、マンゴー味と間違えた黄色のアイス「バタースカッチ味」、
大関さん特注の「ハニージンジャーティー(生姜めちゃめちゃ増量バージョン)」。生姜で体中の血が沸騰しそうになるほど最高に刺激的な味でした!
そして、一番のお気に入りはガイドのラジャさん宅でいただいた「ウォー」という黒豆のドーナッツ。機会があったらバケツ一杯食べたいと夢見ています。
また、ネパールでの主食はジャガイモの自称ミスポテトとしては、いつかジャガイモの聖地巡礼をして、ネパールの高地でとれるおいしいジャガイモを食べてみたいです。
(続き)
●ツアー内容のその後
昨年と同じ行程のはずが、嬉しい初体験がいくつかありました。ポカガールとポカを詰めたり、ダンスのレッスンに飛び入り参加したり、初めて飼い猫に遭遇したり、詩絵ちゃんのお誕生会でネパールのケーキも食べました。
大麻の葉っぱを見つけたり、地元の床屋で髪を切るメンバーのカットショーを見たり、警察署を訪問して署長のミラさんのカッコいい姿にうっとりしたり(ミラさんは女性です!)、
ヨガレッスンに挑戦して水揚げされたマグロみたいな写真を撮られたり、ラジャさんが最近購入した山荘にお邪魔したり、髪の毛を編みこみしてもらったり、
ダンスバーに行ってセクシーダンサーに札束をばら撒くおじ様を生で見たり、マイティの大きなステージでファッションショーもしました。
同じことは一つとしてなくて、毎日が新発見の連続でした。きっと、何回参加してもまた違った気づきが得られることでしょう。これも一重にまり子さんのホスピタリティと企画力のおかげだと思います。
加えて、マイティやホスピス、プリベンションホームでみんなの変化を感じられたことが最大の魅力です。
ランジットくんは身長がとても伸びました。サンティのことを思い出して涙ぐむプシュパにもらい泣きしました。ヘタウダの卒業生たちはミシンを上手に使える人になっていました。
マイティの赤ちゃん部屋で寝ていた赤ちゃんが、自分で歩ける幼児になっていました。
そして、何人もの人が「また来てくれた」と私を抱きしめあるいは微笑んでくれて、彼女たちが私たちの再来を1年間本当に楽しみにしていたことを実感しました。
また、昨年感じた不便さを克服することができたことも大きな収穫です。
ほこりだらけの街もマスクなしで過ごせるようになったし、行けなかったピクニック場のトイレも五感を刺激する山越えのトイレも拍子抜け。
慣れるってすごいですね。便利に慣れるのは簡単だけど、不便にも慣れるということを知りました。Wi-Fiもうまく繋がらなかったので携帯もほぼオフ。
それはそれですごく楽でした。実際生活してみるとそれが当たり前になって、当たり前のことにイチイチ不便とか思わなくなるのだなと感じました。
不便だと思っているうちは外の人間なのかもしれません。もちろん、私はまだまだそして今後も外の人間ですけれど。
●捨て子のその後
マイティには路上に捨てられていた新生児もやってきます。特に、障害をもった子どもは捨てられる傾向があるそうです。
今回の訪問で口唇口蓋裂の乳児に会いました。本来であれば、ミルクを飲むことにも苦労するこの子には献身的なケアと適切な医療を与えるべきですが、捨てられていたそうです。
ですが、実は口唇口蓋裂はその生まれた時のビジュアルのインパクトから、私たちの住む日本でも母親が大きなショックを感じる障害でもあるのです。
実際は、成長に合わせて手術をすることで問題は解決するし、形成外科の手腕一つでお化粧をすれば全く気がつかれない程度に整復することは可能なのですが、
母親が受けるショックは本当に大きくて自分を責めてしまうため、母親の心のケアが必要とされています。
これほど医療が進んでいる日本でも同じなのですから、ネパールにおいてはすぐに解決できないことかもしれません。
しかしながら、驚く気持ちは理解できますが、路上に捨てるという行為には複雑な気持ちを抱きました。
野良犬に襲われたら? カラスにつつかれたら? 命あるうちにマイティに運んでこられたことだけでも、とても幸運なことなのかもしれません。
日本でも、障害をもった子どもたちが密かに命を絶たれた事実はあります。でも、私たちの国はそのことがどんなに理不尽なことか理解し、社会として取り組むことができました。
ネパールはまだまだインフラの整備も追いつかず、障害児の人権を考えるような余裕がないのかもしれませんが、国として早急に対策を立ててほしいと切に願いました。
知識があれば、例えば手術で治るとか、どの機関に相談すれば補助してもらえるとか、育てられない時の預かり先とか、母親の行為や前世で悪いことをしたからそうなったのではないとか、
そういった知識があれば、人としてもっと大切に扱われるチャンスが広がると思います。そういった啓蒙活動もぜひ行ってほしいです。
●ネパールの人とのその後
私たちの無茶ぶりのような「ナマステ」攻撃に、戸惑いながらも律儀にはにかんで答えてくれるネパールの人をとても愛おしく思いました。
しかし、このハニカミの国の特徴を言い換えれば、外部の人間に対して警戒心が低いともいえます。
それはつまり、だまされやすいということなのかもしれません。自分には警戒しないでと思ってしまうずるさと板挟みの感覚に難しさを覚えました。
昨年の感想にも清らかな瞳を残したままの教育の難しさについて触れましたが、今年も同じような感想をもって考えさせられました。
教育はある面では「知る」ことを学ぶことといえるのではないかと思います。
知っているということ、知りたいと思うことはとても重要なファクターです。ネパールに暮らす彼らは私たち日本人と比較してあまりにも選択肢が少ないのが現状です。
スマートフォンの普及など、能動的にも受動的にも情報が手に入る状況はできてきているように感じます。でも、知るということは情報を手に入れることとイコールではないでしょう。
手に入れた情報を、どのように理解して・判断して・使うのか、その方法を学ばなければ、知っていることにはなりません。
路上で不衛生に生肉を売っているその横で、最先端のスマートフォンに釘づけになっているアンバランスさにとても不安になります。
一足飛びに便利なものを導入するにしても、1つひとつの物事をスモールステップで理解していかなければ、日本の援助で作られた動かない信号機のように、本来の便利さや安全を手に入れることはできないと思うのです。
特に、ヘタウダの少女たちには、もっと求めてもいいんだということを知ってほしいです。知りたいという欲求と、その欲求をもつ権利があることを。
知識は誰にも奪えない財産なのですから。たった10日間のツアーでは何かを変えることはできませんが、魔法が手品だとわかったり、日本という異文化の国を知ったり、そういう小さなきっかけにはなるはずです。そのときはわからなくても、何かのときにそういった体験が彼女たちの選択肢を広げる手助けになると思います。だから、これからもこのスタディツアーが続いていくことを願っています。
●珍事のその後
今回もメンバーの皆さんに本当にお世話になりました。その中でも、一番の珍事は「ホテルの部屋の鍵が開けられなかったこと」です。
ホテルSAMANA203号室の鍵を何度やっても自分では開けられず、結局全日メンバーの皆さんにお世話になりました。皆さん本当にありがとうございました。
自分の手が邪魔で取っ手が回せない不思議な現象、部屋に閉じ込められて出られない恐怖、一生忘れません。それもいい思い出です。
●リベンジのその後
さてさて、参加動機である「やり残したことがあったから」という気持ちがどうなったかというと、結局消化されずまた新しい心残りができてしまいました。
私はこの心残りを宿題に、またいつか来ることになるかもしれません。1度目のネパールは未知の体験、2度目のネパールでやっと現実的な課題や自分にできることが見えてきました。
2回で完結しようとしていた自分が甘かったと反省しました。また、このツアーには、また会いたい、成長が見たい、次はこうしてあげたいと思ってしまう中毒性がありました。
まるで親戚に逢いにきているような気分になってしまうのです。「また来年」と思わず言いそうになってしまうのです。
この国の問題は人身売買だけではなくて、そもそもは英語を学んで外貨を稼ぐしかないと教育にも色濃く出ているこの国の貧しさが問題だと思います。
併せて、ネパールの人の利を求めないマイペースな国民性はマイナスにも作用するように思います。夜に市場へ行った際、買いたいと言っているのに時間だからと店じまいをしてしまったお店がありました。
日本人やインド人なら絶対にそんなことはしないはずです。
自宅近所のカレー屋さんで働くネパール女性に言われたことを思い出します。「ネパールの男性は怠け者なの。そんな人たちを助ける必要はないのよ。
ネパールに行くあなたの気持ちがわからないわ」と。腎臓病を患っているマヘンドラくんの家でも、母親が一番の働き手であると聞きました。
もちろんすべてがそうではないと思いますが、そういう部分を感じるのも事実です。だけど、将来に夢がもてなかったり、選択肢が少なかったり、閉塞感を感じている状況がそうさせているのかもしれません。
そういう意味でも、このツアーを続けて、わずかながらでも外貨を落としたり、他の選択肢もあることを想像させたり、1年に1回の訪問でも忘れずにいる人が日本にいることを知ってもらうことは意味があることかもしれません。
私には何かを変えるような大きな力はありません。人身売買を止めたいと思っても、私にできることはあまりないのかもしれません。
けれど、マイティにもホスピスにもヘタウダにもホテルにもタメルのTシャツ屋さんにもたくさんの友人ができたネパールは、私にとってすでに知らない国ではありません。
1年前は名前しか知らなかった国が今ではとても身近に感じます。私が昨年お土産を配った周りの人たちもネパールのことを気にしてくれるようになりました。
ネパールのことを知りたいと思う気持ちが生まれたこと、これも支援の第一歩なのだと思い、今年もスーツケースいっぱいにお土産を買いました。
ここに、備忘録として私の次回訪ネパールの課題を書き留めておきたいと思います。
まず、持参荷物を減らすこと! そして、ヘタウダの女の子たちに日本を紹介するムービーをつくること! マイティの子たちにバルーンアートのつくり方マニュアルをつくること!
もっともっと、みんなが笑顔になる手品を研究すること(打倒、大野国さん)! ←案外単純なほうがわかってもらえます。
ネパール語もしくは英語の会話力を微力アップすること! ポカや支援物資を確実に忘れずに届けること(いつ何が必要かを早めにリストアップする)!
マイティやホスピスの皆さんのマイプロフィールをつくる! これさえできれば、心残りがだいぶ減るのではないかと思います。
でも、後悔があるほうが次の目標ができていいのかもしれません。うまくいかないことを楽しめる幸せを感じています。
●感謝のその後
今回も素敵なツアーメンバーに囲まれて本当に楽しいツアーになりました。この場をお借りして皆さまに感謝申し上げます。
まず、高校生5人組。高校生と一言にまとめてしまうのは申し訳ないくらいそれぞれが個性的でしっかりと自分をもっている皆さんでした。
最年少ながら好戦的なかわいいなほちゃん、ちょっとした一言が真理を突いている感性が素敵なみかちゃん、いつも優しいけどブラックも魅力の聡明な詩絵ちゃん、
ファッションショーの救世主ダンスがプロ級のなおちゃん、困ったときにいつも助けてくれたにこにこ宮野くん。みんなの行動力や熱い気持ち、尊敬しています!
そんな彼らを引率していた吉田校長先生は懐が広い理想の上司です。こんな先生が存在するのかと驚愕しました。
はじめましての大関さんは本当にキュートで生き生きしていてアイドル的存在! 久保田さんは寡黙かと思いつつ結構お茶目で高校生の頼れるお兄さん。
ネパールで嫁探しする姿がリアルでみんなを楽しませてくれました。今回、男性が多く参加していたこともすごくよかったです。
女の子たちもとても喜んでいましたし、ネパールの大量のご飯を残さずに済みました! 今後もこの問題に取り組もうとする男性が増えることを願います。
リピーターのもっちゃんは安定の面白さ。今年は完璧なエスパーに成長、ツアーになくてはならない存在です。メグさんには「いじわる猫」という新しい名前がつきました。
ムードメーカーのメグさんの正体は世話焼き姉さん。メグさんの気遣いは本当に素晴らしく、みんなにわからないところでたくさん尽力してくださいました。裏で頑張るウラバンでした。
大野国さんはツアコンと通訳をこなしてくれるネパール愛の塊。いつも全体を考えてくださいました。女装姿で車窓から手を振る大野国さんの満足顔が脳裏から離れません(笑)。
ガイドのラジェンドラさんは本当に最高のガイドです。心がこもったおもてなしありがとうございました。
今回、ラジャ子に会えなかったのは残念でした! また、石川さんをはじめとしたラリグラスのスタッフの皆さま。ツアーが安全に遂行するようにたくさん心配りをいただき、ありがとうございました。
そしてそして、長谷川まり子様。毎回私たちのオーダーを聞いて、より充実した旅になるように尽力していただきました。このツアーの要、カリスマ的存在のまり子様がいなければ、どれもこれも成り立たない企画です。どうか、お体を大事に、このツアーや支援が続いていくようにお過ごしください。
●最後に
私は何かを始めるときに、着地点をどこにするのかということを考えます。大きな目標とその実現のための小さな目標。
大きなことを一度で成し遂げることはとても難しいことですが、小さい目標をいくつもこなして達成感を得ながら少しずつ大きな目標の達成に近づいていくことはそれほど困難に感じません。
ツアー参加に迷っている方がいたら、まずその一歩を踏み出してみてほしいと思います。自分のしている支援がどんな形で相手に伝わっているのか、
ダイレクトに知ることができるこのスタディツアーはとても意味があるものだと感じています。スタッフの皆さま、この機会を与えてくださったことを重ねてお礼申し上げます。
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