2017年夏(37回)スタディツアー感想文
1)荒川さん(埼玉 学生 男性)
人身売買。校内掲示板でその言葉が目に入ったのが始まりでした。日本という平和を提示され続ける環境の中でその言葉はあまりにも異質で全く想像のつかないものでした。なぜそんなことがまかり通っているのか。どんな理由をつけてそのような人権の剥奪を実行しているのか。知識が全くなかった私にはそのような疑問が次々と浮かんでいました。
そして昨年ネパールに行かれたという先輩の話をもとに人身売買、性被害の実態について少し調べていく中で、そのあまりの現実性に驚愕し、もっとこの問題について知りたい、知るべきだと思いました。それが参加に至ったきっかけです。
(続き)
初めて訪れたマイティ・ネパール。最初に触れ合ったのはAIDSに感染しているという赤ちゃんたちでした。本当にどこにでもいるようなかわいい子たちで、傍目にはまるで違いがわかりませんでした。こういう赤子は母子感染がほとんどだということを聞いて、初め日本だったら医療によって未然に防ぐことができたのに……と思いました。しかし、そもそも病気についてあまり詳細が浸透していない現状ではそういう問題ではないと気づきました。そういう意味でもこの人身売買、性犯罪の重さを感じました。
翌日訪れたテレサ・アカデミーでは英語能力の高さに驚きました。それもそのはず、ここでは最小学年から英語を学び、授業言語としてそれを使っているからです。それに頼り、今回は多くの場面で英語を使いました。汎用性のある言語を学ぶことで初めて訪れる国の人ともコミュニケーションが取れる、言語教育の重要性を再認識しました。また小さい子たちが学んでいる姿を見て、どこか懐かしさを感じた反面もっと努力しなくてはいけないなと思いました。
プリベンション・キャンプの子たちとのピクニックでは、まず何よりその体力に圧倒されました。インド風の音楽に合わせて踊り続けるその姿は楽しさに溢れていました。手を引かれるままに私も踊り始めるとかなり楽しい。また言葉以外で繋がれた気がして少し嬉しくなりました。すっかりこのキャンプを楽しんでいた私は、しかし彼女たちの話を聞き始めると一気に気が引き締められました。彼女たちの話す生活環境はあまりにも過酷で、日本ではすでに過去のものとなった水汲みなどの家事に日々を追われていました。私たちとの違いは同じ地球のなかでどの地点に生まれたかだけ。しかしそれでこんなにも生活が異なるとは思ってもいませんでした。利益が第一のこの資本主義社会。この現状を聞いた今でもこれを否定しえない自分が悔しかったです。しかし利益を生み出してからでないと無利益の援助はできないことも理解できたのです。
ヘタウダから一時間ほどのところにあるインドとの国境・ビールガンジは砂埃と暑さが他の比ではありませんでした。そんな環境の中、チェックポイントで怪しい車を呼び止めては人身売買を防ごうとする彼女たちの仕事は過酷そのものとすぐにわかります。しかしここが最終関門とわかっている彼女たちは一切手を抜いているようには見えず、その心持ちを続けていけることに感嘆しました。またそこで食い止めた人数が今年に入ってから108人もいるということを聞いて驚くよりも、同じ人を売ることがビジネスとして成り立っていることに嫌気がさしました。人身売買に対して最も憤りを感じたのはこの時です。
今回のツアーでは人身売買の問題についてさまざまな方面からサポートする現場を見ることができました。日本では敬遠されがちなこの問題について高校生の私たちが触れられていることは恵まれたことだと思います。だからこそ私たちにとって重要なのはここからだと思います。このツアーで得たこと、感じたことを伝えていく。それによって今まで知らなかった人が考えてくれる、そこには大きな意味があると感じています。
最後に、引率してくださった吉田先生、上田先生はもちろんのこと、高校生という私たちを温かく迎えてくださったまり子さん、ツアー参加者の皆さまのおかげでこんなに楽しくも密度の濃いツアーを送ることができました。皆さまの言葉に心が動かされ、ものの見方・考え方が変わる場面が何度もありました。皆さまと出会えたことは私の人生のなかで大きな財産の1つです。改めてこの11日間本当にありがとうございました。すぐとはいかなくともまたこのネパールのツアーでお会いできる日を楽しみにしております。私は必ずまた参加します。
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