2017年夏(37回)スタディツアー感想文
2)岩間さん(北海道 社会人 女性)
 初めてのネパール、そしてかなり久しぶりの海外。強い不安ではなかったものの、思った以上に緊張をしていたのかもしれません。羽田で皆さんに初めてお会いし、にこやかに声をかけていただいたとき、すごく安心できました。

 ネパール滞在中も、誰からともなく「初めてのスタディツアーどう?」と声をかけていただいたり、トイレのこと、水のことなど、いろんなことを教わり、ありがたい気持ちでいっぱいでした。なにより、毎日笑っているような楽しいツアーだったことは、嬉しい想定外でした♪


 初日、マイティ本部に訪問したとき、思ったよりも明るい雰囲気だというのが第一印象でした。みんなでお菓子の袋詰めをしているとき、ふと外を見ると、子どもたちが今か今かと言わんばかりに並んでいる姿が見えて、みんなが心待ちにしていたことが、すごく伝わってきました。日本の子どもなら、もしかしたら興味ももたないようなお菓子を、この子たちはこんなにも楽しみにしていて、そして私たちが訪問することも本当に楽しみにしているのだと話には聞いていましたが、ひしひしと伝わってきました。

続き
 リピーターの方々は、何人もの名前を覚えていらして、子どもたちや女性たちも、リピーターの方々の顔を覚えている様子を初日に垣間見て、私もこんなふうに交流ができるのだろうか、名前を覚えることができるのだろうか、うまくコミュニケーションがとれるのだろうかと少し不安でした。ネパール語ももちろんのこと、英語さえもうまく話せなかったのでなおさらでした。

 でも、例えばピクニックの後、プリベンション・キャンプを訪問したときや、2回目のピクニックの後、ホスピスに行ったとき、何人かの女性が私の顔を見つけて、覚えている様子を見せてくれたときはとても嬉しく、ちゃんと話ができなくても、こうやって顔だけでも覚えていたら笑顔で近寄っていけること、それだけでもいいのだという、シンプルなことに気がついたら、彼女たちとの交流もより楽しくなってきました。

 初日から最終日まで共通して感じていたのは、ラリグラスとマイティの子どもたちや女性たちとの交流の密度についてです。事前にまりこさんの書籍『少女売買』を読んで、まりこさんが徐々に彼女らとの距離を縮めていかれる経緯は把握していたものの、「ドナー」であること以上に、人と人との心の交流が確実に築かれていることを肌で感じられ、正直少し驚き、ラリグラスの20年の支援の歴史に、思いを馳せました。

 そしてにわかに参加したかのようなこの私が、付け焼き刃的にマイティのことを語るなんてことは失礼なことだろうかと思いながら、滞在中、私の脳裏に常にあったのは「このことをどう周囲に伝えようか」でした。私1人の支援では本当にわずか。だから、誰と誰に伝えようか、あの人たちはこの話を聞いてくれるだろうか、どんな伝え方をしようかと、気がついたらずっと具体的に考えていました。ほんの少数にしか伝えられなくても、なにがきっかけで、1人がまた1人に伝えるかはわからない。そしたら支援も少しは増えるかもしれないと考えていました。こんなふうに本気で思いめぐらしたことは、初めてです。

 これまで、世界のどこかしらで起こっている人身売買やレイプなどの性暴力や性奴隷の問題は、頭の片隅に置きながらずっと傍観者だったなぁって改めて思いました。それでもよかったのだと思います。私の場合は、傍観者のままで、それ以上のことはできないだろうと思っていました。

 けれど、私のような年齢でも、スタディツアーに参加できることを知り、長年の傍観者の腰が、あがったのです。「できることを少しでもしてみよう」以前に「現場を知ってこよう」と思いました。ネット情報でもテレビでもない現状を知ろうと思ったのです。

 現地に行ったら、もしかしたら私は「嫌だ」とか「無理!」などと思うかもしれないことも、想定しておくことにして参加しました。まさか、支援のことを含めて周囲に伝えたいと思うなんて、ちょっと想定外です。きっと、頭の片隅に置いたことが、遅ればせながらやっと「現実」になったのではないかと思います。

 そしてもう1つ、帰国後しばらくしての想定外なこと。あの子にもう一度会いたいとか、出会った女性や子どもたちの、成長をこの目でみたいと思ったり、もう一度、あの子と、あの女性と、ちゃんと話してみたい……という気持ちです。

 一方では、お釈迦様に一番近い国、信心深い国、聖なる山ヒマラヤが近い国が、いつまでたってもこんな状態。信仰ってなに? 神様の乗り物だという牛は殺さないけど、少女や女性たちには何してんの? という、暗中模索にも至らない疑問と持っていき場のない憤り。カースト制度と政治への疑問など、出口がみつかるのかどうかもわからない思いと思考を繰り返してもいます。みんなが同じ考えでないと思うので、参加者の方々との意見のシェアも興味深いなと思っています。

 マイティ本部で、お菓子を渡したとき、まりこさんが言われました「お菓子を渡すことだけでも、この子たちは覚えているのだ」と。お菓子を渡すとか、一緒に踊るとか、一緒に笑うということは特別な支援ではありません。でも、それぞれの心に残り、結果、私の心にも残っていてまた会いたいと思うのは、こっちのほうなんだと気がついたとき、参加が初めてとはいえ、おそらく私には、いろんな意味での距離があったのではないかと思いました。その距離が、今度はもっと近くできるように思います。それは、こちらから心を開くということなのだろうって、今は思っています。

 最後に、この度一緒に参加できた皆さん、細かな気遣いや、楽しい時間を、本当にありがとうございました。そしてラリグラス・ジャパンの皆さま、まりこさん、通訳のラジャさん、早稲田本庄のみんなと、吉田学院長と上田先生、貴重な時間を皆さんと共にできたことを嬉しく思っています。ありがとうございました。
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