2017年夏(37回)スタディツアー感想文
6)小野さん(東京 学生 女性)
 私は、中学生のときから「高校生になったら何かしらで海外での研修をしてみたいな」と思っていました。そこで志望校であった早稲田本庄のSGH研修を調べていたときに見つけたのがラリグラス・ジャパンのスタディツアーでした。しかし、高校に入学するまで正直言って私はネパールという国をほとんど知らず、私がネパールに関して知っていたことは、インドのお隣さん・貧しい・国旗の形が特殊なことくらいでした。

 その後、ネパールへ行くことが決定して読んだのが長谷川まり子さんの『少女売買』という本です。私はこの本を読んで、「ずっと日本で安全に暮らしてきた私がこのような辛いバックグラウンドをもった少女たちとどうやったらうまくコミュニケーションをとって一緒に楽しめるのだろう」という不安を抱きました。そしてその不安を抱いたまま、私はネパールへと出発しました。

続き
 ネパールに到着して街へ出ると、空気はほこりっぽく、道路が何車線かわからないほど車が混み合って走っていて決してきれいとはいえないような小さな建物がぎゅうぎゅうに並んでいました。またその建物の中で携帯電話や洋服が売られて賑わう一方、道端に静かに座っているストリートチルドレンの姿もあり、開発途上国と呼ばれるネパールの中での貧富の差も感じられました。

 マイティ・ネパールを訪問して驚いたと同時にとても嬉しかったことは施設に住んでいる子たちがとびきりの笑顔で「ナマステー!」と挨拶してくれたことです。その様子を見て、私のネパールに来るまでの不安は吹き飛びました。その笑顔は売春宿で働かされていたことやHIVに感染してしまっていることを忘れさせるほどのものでした。その笑顔からは、ただ楽しい嬉しいという印象だけでなく、辛いバックグラウンドから抜け出して新しい人生を送りたいという前向きな力強さも感じました。しかし、全員がそのように立ち直れたわけではなく、中には端っこのほうに無表情で座っている子もいて過去の出来事の重さも感じました。

 1日目、そんなマイティの子たちにお菓子の詰め合わせをプレゼントしようとするとお菓子のためにみんな列を作り始めました。そのとき、お菓子は施設の子たちにとってはなかなか食べられない貴重なものなのに年下の子たちを当たり前のように先に行かせてあげるお姉さんたちの姿を見て、小さいことだけれど日本では見られない優しさに胸を打たれました。私がネパールで出会った人たちはみんな相手に対しての思いやりがあり、いつも感じよくニコニコしていて、大野国さんがおっしゃっていた「ネパールは国の豊かさは日本よりも劣っているけれど、心は日本よりも豊かだ」という言葉を実感しました。

 ピクニックのときに出会った、ヘタウダのプリベンション・キャンプの子たちはカトマンズのマイティ・ネパールの施設にいる子たちとは違い、ほとんどの子が学校を中退してしまっていたため英語を話せる子がとても少なかったです。そのため、私たちのコミュニケーション手段は表情とダンスでした。プリベンション・キャンプの女の子たちに会うまでは言語が通じないことがとても大きな問題だと思って不安でしたが、実際に会ってみるとまったくそんなことはありませんでした。言語はお互いの情報を知るためには必要なものかもしれませんが、一緒に楽しむことに言語は必要ありませんでした。ただ笑ってくたくたになるまで踊って一緒にご飯を食べて手を繋いで歩いたという単純なことが、本当に楽しい思い出になりました。

 今まで十分な教育も受けられず、村で何時間も歩いて水汲みや薪拾いの手伝いをしながら生きてきて、これからも教育を受けなくてもできるような仕事をして自立していかなければならないという事実は、ずっと日本で暮らしている人にとってはもしかしたら「かわいそう」と感じてしまうのかもしれませんが、彼女たちはそのことを悲観しておらず生き生きとしているように感じました。その姿を見て、日本という先進国の殻に閉じこもって恵まれた環境の中で小さなことにいちいち不満を漏らしてしまう自分が情けなく恥ずかしく思えました。

 私は今回ネパールへ行くまでは、ただの旅行目的でしか海外へ行ったことがなく発展途上国と呼ばれるところに行ったのは初めてでした。実際に行くまでは、「日本人のように恵まれた環境で暮らせないなんて不幸せだ」などというとても失礼なことを考えていました。

 しかし実際に行ってみると、日本に暮らしている人にとっての幸せとネパールに住んでいる人にとっての幸せ、また国によってだけでなく人それぞれ自分が思う幸せがあってみんなそれに向けて一生懸命に生きていることがわかりました。だから、発展途上国で暮らしている人たちを一概にかわいそうだという言葉で片付けてしまうのは彼らに対して失礼なことだと感じました。

 高1の夏にほとんどの高校生が体験できないような経験をして今までで一番たくさんのことを学んだ11日間を過ごすことができたのは吉田先生、まり子さん、ラジャさん、ツアー参加者のアダルトチームの方々、大学生の方々のおかげです。皆さん食事や移動のときも高校生の話を真剣に聞いてくださって、たくさんお話することができたのも貴重な経験となりました。関わってくださったすべての方に感謝しています。ありがとうございました。


Copyright (C) Laligurans Japan