■障害に対する一般認識■
ネパールでは古くから、障害は前世の罪の結果であったり、宿命や神の意思によるものと考えられています。
こういった社会通念によって、障害をもつ子どもは、適切なケアや治療を受ける機会を妨げられているばかりでなく、障害を恥じる両親によって、座敷牢のような部屋に閉じ込められているケースも少なくありません。
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■貧困■
ネパールには、家庭内の成人男性がまず食事の一番良い部分を食べる習慣があります。母親は、男性の食べ残しの最善の部分を息子に与え、その残りを自分と娘で分け合います。
もともと、貧困家庭の栄養状態は良好とはいえず、女性は慢性的な栄養不足の状態にあるといえます。例え妊産婦であっても、栄養価の高い食べ物を提供されることはありません。
さらに、貧しい家庭では、一人でも多くの働き手を確保するために、たくさんの子どもを出産することが望まれます。よって、障害児の出生の確率の高い高齢出産も行われています。
また、健康管理に関する知識をほとんど持たない妊婦は、妊娠中に強い薬を服用してしまったり、普段と変わらない重労働に携わってしまうことも少なくありません。母体の栄養不足、多産と過重労働による母体の慢性疲労が原因となり、貧困家庭では子どもが障害をもって生まれてくるリスクが高いといえます。
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■政府の障害者支援■
障害者の支援をおこなう政府機関としては、保健省の下にこども保健部門、伝染病管理部門、ハンセン病管理センター、国立AIDS/STDセンターがあり、これらが障害者の予防、治療サービスの担当となっています。
また、地域開発省の下におかれている地区開発委員会(DDC)と農村開発委員会(VDC)が障害者を含む地域社会の生活保護を担当しています。
VDCは障害者登録制度のもとで、障害手当ての支給のためにすべての障害者を登録して維持管理をおこなうこととされています。
しかし、実際には政府による障害者支援策は機能しているとはいえない状況です。中でも、カトマンズから離れた農村に住む障害者に対しては、まったく支援が行き届いていないのが現状です。
例えば障害者登録制度に関していえば、
○ 登録の基準となる「障害者」の定義が曖昧で徹底されていない
○ 障害手当て支給の窓口となる農村開発委員会の職員の研修
が不十分
○ 障害者に登録制度を認知させる広報ができていない
○ 障害者のVDCへの物理的アクセスが困難
などの理由から、現在のところ手当てやサービスはそれらを必要とする障害者に行き渡っていません。
さらに、近年障害者に対してのケアやサービスをおこなうために障害者身分証明書を提供するプログラムもはじまっていますが、これも障害者登録制度と同様に実質的には機能していない状況です。
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■ユニセフによるネパールの障害者支援■
こうした中、ネパール政府に代わってユニセフが障害者の支援活動をおこなっていますが、ユニセフの規定では、カトマンズ盆地に在住する障害者は支援の対象外とされています。カトマンズ中心部に近く、医療センターや病院へのアクセスがしやすいためということが、理由としてあげられています。
しかし、実際にはカトマンズ盆地と呼ばれる地域も、中心部を少し離れると山がちで、公共の交通機関も整っておらず、障害者が医療サービスを定期的に受けに行くことは不可能といえます。
ネパール障害者女性協会は、そのような国や国連の支援の対象から外れてしまっているカトマンズ盆地、ラリトプル地方の障害者に対して熱心な支援活動を継続しています。
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